ネガティブな要素から身を守るための第一歩は、自分の感情が周囲の世界にどのような影響を受けたかということ、そして周囲の世界が自分の感情からどのような影響を受けたかということ、その両方を理解することから始まります。

幸せ、悲しみ、喜び、不安、肥満、喫煙など、人間の習慣や感情には良いものも悪いものもありますが、新しい研究ではそのいずれにも伝染力があることが示されています。

あらゆる集団に縦横無尽のソーシャルネットワークが張り巡らされている現代、ちょっとした波紋は一瞬でたくさんの人に広がります。この手のネットワーク内の無数の相互作用もまた、人々の行動やアイデアに広範な影響を与えます。

そこでネガティブな要素の伝播する様が風邪やインフルエンザの伝染力に劣らないということは、科学的な研究で立証されています。病気の疫学的モデルと比較してみたら、気分の伝わり方もほぼ同じパターンで循環することが判明したのです。

寒い季節になると、友達付き合いの多い人ほど鼻風邪をひく可能性が高くなります。ネガティブな姿勢や思考パターンにも同様のことが言えます。ネガティブな人々と接する機会が多いほど、ネガティブな思考や発想に意識が向きやすくなってしまいます。

ただし、両者には大きく異なる点があります。 風邪をひいてしまったら、体に戦ってもらわなければなりません。健康な人たちとともに過ごすことで、風邪は治りません。

ところがネガティブな要素に「感染」したときは、前向きな人たちと過ごし、ポジティブな方向性を取り戻すようにすることで「治す」ことができます。むしろそうした方が早く「回復」できることも明らかにされています。

ポジティブ(研究では「満足」)な状態からニュートラルな状態になるまでと、ネガティブ(研究では「不満」)な状態からニュートラルな状態に戻るまでを比較すると、かかった時間は前者が2倍であったということです。

ネガティブからの回復は一見早いようではありますが、引っ張られやすさではネガティブな方が上回ります。研究では、ネガティブな接触の直後は不幸を感じる確率が倍増することが突き止められました。

これに対して、ポジティブな接触の直後に幸福感が増す確率は11%に過ぎなかったということです。しかしながら、悲しみよりも幸福感の方が自発的な感情としては優位であったことが明らかにされました。

一方、別の研究では、親切な行いや協力も、ソーシャルメディア上で驚くべき速度で広がることが報告されています。一個人が優しさをひとつの行動にすると、三倍速と認識できる(一人から三人へ、を繰り返す)効果が生まれるということです。

ポジティブな要素は広く外へ枝を広げ、たくさんの人の生活に届く性質があるようです。この波及効果によって、あなたもまた、実際には会ったことのないたくさんの人々の暮らしを変えることができるかも知れません。

私たちが日々周りの人々の感情に影響されていることは明らかです。ネガティブな人々に囲まれていると、負の思考パターンに沿って物事を考えてしまうようになりがちです。ポジティブな方向にしっかりと意識を保っている人たちと過ごしていれば、思考や発想も肯定的になっていきます。

これは私生活の中であれば比較的簡単に応用でき、よりポジティブな物事、人、経験、アイデアやコンセプトを引き寄せることができるでしょう。では私生活以外で、一緒にいる相手を選べない場ではどうすればよいでしょうか。

職場では通常、隣に座る人さえ、健康か病気か、ポジティブな人かネガティブな人かで選ぶことはできません。個人レベルの態度と集団的思考過程において感情が大いに影響することは複数の研究から見出されています。

思考プロセスのポジティブな人々に合わせれば、同僚もポジティブな影響を受け、より協力的に働き、諍いが減り、タスクパフォーマンスが向上します。

職場にネガティブな存在がある場合は、メンターを見つけるとよいでしょう。

メンターはより広い視野を持ち、将来を見据えてポジティブでいられるよう助けてくれます。また、職場の複雑な人間関係のなかにありながら、ネガティブな人をできるだけ避け、ポジティブな人と接する時間を最大限長くとれるようにする工夫を、メンター自身の経験から教えてくれるはずです。

同時に、ネガティブな人と接する度に負の影響をまともに受ける必要はないということも覚えておくべきです。苛立ちを感じても、ネガティブな方へ引き込まれそうになっても、それにつられてはいけません。激しい口論(職場では望ましくないものです)になったり、毒性のある感情に囚われたりするのが関の山です。

ネガティブな言葉は聞き流して、自分の中にあるポジティブな部分に意識を集中させることで、好ましくない状況からできるだけ早く離れられるようにしましょう。

例えば同僚が陰口にあなたを付き合わせようとしてきたら、同意したようなふりをして聞くのではなく、まだ仕事があるから、と早々に席に戻るのです。

ポジティブな姿勢を維持している幸せな人たちに囲まれていれば、自分もまた幸せを実感していられます。友達が幸せそうなら自分も嬉しいと思うのと同じです。

研究者によると、幸福もまた社会的感染症の一形態として考えることができるそうです。

感染する幸福感は気分の不安定になりがちなティーンに有益に働く可能性があります。ティーンに着目した研究では、身近な友人が健康的な情動を有するほど、うつの発症率は低く、発症したとしても回復が良好な傾向にあることが報告されています。

ネガティブな思考や人々、状況から完全に逃れることはできません。でも、それでよいのです。それも人生の一部です。

ネガティブな要素を逐一除去することよりも、全体的にポジティブな展望を維持することの方が大切です。ネガティブな感情が忍び寄ってきたら、その存在とそれがどこからやってきたのかを認識することが大切です。その上で、思考をポジティブな方向へ持っていくのです。この切り替えはなるべく早く行うのがポイントです。ネガティブな人や経験に引きずられていては、よりネガティブな要素を招くだけです。

浮上が困難な深さまで引きずり込まれないようにしなければなりません。ひらめきをもたらしてくれる人、励ましてくれる人、可能性を開花させる手助けをしてくれる人の中に身を置いて、本来あるべき方向性に集中して下さい。

望まないことではなく、望むことに焦点を合わせるのです。自分の心のフォーカスした場所にある物事
が引き寄せられてくるのですから、望むことにフォーカスを合わせましょう。

例えば「退屈で意味のない仕事が嫌いだ」と考えるかわりに「楽しくてやりがいのある仕事を見つけたい」と念じるようにするのです。

感情には伝染する力があり、それはあなたの人間関係を通じて、家族や友人、同僚、知人へと広がっていきます。好ましい感情に寄り添うよう心がけていれば、幸せも喜びも大きくなり、明るい展望がどんどん開けていくはずです。

それはあなた自身の人生だけでなく、周囲の人たちの人生も豊かなものにしてくれるでしょう。