鉄は生きていくうえで不可欠なミネラルです。鉄がなければ、体内のあらゆる器官・組織・細胞に酸素を運ぶことができなくなってしまいます。

他の栄養素と同様、鉄の必要量はライフステージに応じて変化します。ひとつの節目となる50代以降にどの程度の鉄分摂取が必要なのか、考えてみましょう。

鉄分不足と貧血が起きる原因

50代以上で貧血が多いのは事実ですが、鉄がなぜ不足したかとなると原因は千差万別で特定しにくいものです。

アスピリンやその他の非ステロイド性抗炎症薬は、痛みの自己管理を目的に広く使われていますが、長年服用していると、消化管から出血が生じる可能性があります。それによって貧血が起こります。

非ステロイド性抗炎症薬の使用歴の長い人ほどリスクは高いので、高齢者に起こる確率も高いと考えられます。

加齢に伴って味覚が鈍くなると、食べ物にあまり興味が持てなくなって食事が偏ることがあります。偏食は特定の栄養素が不足する原因となりかねません。シニア層ではビタミンBと鉄の不足が一般的です。

高齢者で鉄が不足しがちな理由は様々ですが、代表的なものだけでも、服薬、抗がん剤、吸収不良などが挙げられます。さらに厄介なことに、高齢者の貧血は、炎症によって引き起こされることもあります。

また、鉄不足が原因で、疲れたり体が弱くなったりすると貧血を生じやすくなるケースもあります。鉄欠乏が重度になると、顔色が青白く変わったり、認知能力が低下したり、臓器に障害が生じたりします。

米国立衛生研究所によると、50才以上の大人は1日あたり約8mgの鉄を摂取するのが望ましいということです。しかしながら、加齢に伴い健康問題を抱えるようになると、鉄の必要量も増えていくであろうことは容易に想像できます。

女性の場合、閉経後は鉄の必要量が大幅に下がり、男性とほぼ同等となります。鉄欠乏貧血症になったら、なぜ鉄が足りなくなったのかを特定するために医師に相談しましょう。

というのも、場合によっては知らないうちに消化管や尿路系に腫瘍ができていて、継続的に血液を失っていた、というような原因が判明することがあるからです。自己判断で食生活のせいにして、鉄分のサプリメントで補おうとしてはいけません。必ず専門家に診てもらってください。

鉄分の摂りすぎによる副作用

一方、鉄欠乏症と診断されていない人がサプリメントで鉄を余分に摂取し、推奨量である1日8mgを超えてしまうと、体にとって害となります。遊離鉄はフリーラジカルの触媒として強力な作用を有するので、体内の酸化ストレスを悪化させてしまいます。

鉄分を多く含む食べ物

鉄を多く含む食べ物、食品はレバーです。

動物の肝臓は焼いたり煮たり炒めたりして食べられます。レバーは鉄だけでなくビタミンAやアラキドン酸、ビタミンB群も豊富です。

イギリスの食品基準庁は、レバーが苦手な人は牛肉から鉄を摂取してもよい、としています。米国の肉牛・牛肉事業者協会は、栄養強化シリアル、栄養強化穀物に次ぐ3番目に優れた鉄の摂取源として牛肉を位置付けています。

シニア層のライフスタイルを考えると、脂肪の少ない赤身肉を選ぶのがよいでしょう。脂肪も健康的な食生活の一部を成す重要な存在ではありますが、消費量は活動量に見合った範囲でなければなりません。50代以降はたいてい運動量が減りますので、脂肪の摂取量も減らすのが賢明です。

鉄を添加した栄養強化シリアルはベジタリアンやヴィーガンの方にとって好ましい選択肢です。

シリアルに鉄をはじめとするミネラル類やビタミン類を添加するという製法は、一般的な食生活では不足しがちな栄養を補うための工夫としてかなり前から実施されています。ただし、ラベルを確認するのを忘れてはいけません。

ウィスコンシン州の調べ(病院・診療所の理事局による)では、種類によっては1食分で18mgもの鉄が入っている場合があることが明らかになっています。朝食用のシリアルひとつでも、自分に合ったものを選べば、その日必要になる鉄を確保できます。

シリアルと同様、栄養を強化した穀物製品も普及しています。穀物そのものだけでなく、パン、パスタ、小麦粉など、健康に配慮して鉄などのミネラルやビタミンが添加されたものはたくさんあります。

先ほどもお話ししたように、成分表示の確認はお忘れなく。何をどれだけ摂取することになるのか理解することは大切です。

レバーや牛肉、栄養強化シリアルほどの含有量でなくとも、鉄の摂取に有益な食品は他にもたくさんあります。体が必要とする鉄を幅広い種類の野菜と果物を食べることで確保することは可能です。

鉄分の豊富な植物性食品としては、モリーユ茸、アプリコット、濃い緑の葉野菜、オリーブ、豆類、エンドウ、アスパラガスなどがあります。

ビタミンCを一緒に摂るとよい

どんな食品から鉄を摂取するにしても、ビタミンCを同時に摂るよう工夫してみてください。

ビタミンCがあると鉄の吸収が良くなることは既に立証されています。柑きつ類、赤ピーマン、ケール、ブロッコリーなど、ビタミンCが豊富な野菜を一緒に食べましょう。食品からより多くの鉄を得たい50代以上の方には特におすすめです