ふとした花の香りを感じた時に立ち止まって楽しむなど、においを意識するよう心がけると、私たちはより豊かに生きることができるかも知れません。

嗅覚と感情の相関性には多くの研究者が着目しており、においで記憶が呼び覚まされる理由を探る試みも進められています。

匂い、嗅覚は脳を刺激し記憶力を高め認知症予防になる

高度な神経画像技術を用いて調べたところ、被験者にとって何らかの意味のあるにおいを嗅ぐと、脳に非常に強い感情反応が現れることが分かりました。

既知のにおいが引き金となって脳内の扁桃体という領域が反応し、そのにおいと結びつく感情を引き出すという、神経生物学的な確固たる証拠が示されたのです。

最近の別の研究では、鼻から強く息を吸い込むと、脳内の電気的活動により、感情的な判断力が強化されるとともに記憶の呼び出しが促進されることが明らかにされました。

鼻から吸気すると大脳辺縁系全体だけでなく、嗅覚皮質、扁桃体、海馬の神経細胞も刺激されることが特定されたのです。

口呼吸の被験者には同様の記憶の呼び出しは認められなかったため、感情に関連した脳の活性化は嗅覚がもたらすものだと結論づけられました。

端的に言うなら、私たちの脳には、感情とにおいを接続する回路が組み込まれているのです。

草刈りの青々としたにおいが漂ってくると、日暮れまで夏の野原を駆け回って遊んだ子供のころの記憶がよみがえるのも、随分前に食あたりを経験した食べ物のにおいが受け付けられないのも、この仕組みによるものです。

アロマテラピーは匂いと記憶と感情を活用している

アロマテラピーは、においと記憶と感情の関連性を理解し、嗅覚を上手に活用しています。

アロマテラピーは、特有の香りがするエッセンシャルオイルを使って心身を支えバランスを整えます。ストレスや不安、悪心を和らげる作用もあるので、生活の質の向上に役立ちます。また、マッサージや鍼など他の補完的治療と組み合わせて施術されることもよくあります。

嗅覚から感情と記憶に働きかけるアロマテラピーは、もっと複雑な健康問題にも有益な作用をもたらす可能性があります。特に、慢性的な不安や恐怖、ストレスといった心理的な問題を抱えている人にとっては、嗅覚を通じた緩和が有益となることでしょう。

嗅覚を使った瞑想法もリラックス法としてお勧め

仏教では禅定あるいは静慮に至る行として瞑想が行われることがありますが、これに嗅覚を組み合わせて気持ちを落ち着かせるのも一案です。快適な環境に身を置いて、心を空っぽにするというよりは、嗅覚に意識を集中させてください。

静かに空気を吸い込みながら、好きな香りを嗅ぎ分けましょう。空気に意識を集中すれば、微細ながらも心地良く感じられる何かを見出せるはずです。

また、視覚も聴覚もにおいを感知する鼻先に集中させましょう。あらゆる感覚を全て鼻先に向けることができるようになります。

瞑想という行為と嗅覚の力で、心と体が香りに溶け込むようにして一体化してゆき、脳内で香りと良い思い出が結びついて、リラックスした気持ちになれます。

空気の中に好ましい香りを見つけたら、ゆっくりと呼吸を続けながら、心地良い状態に浸ってください。このような機会を増やせば、それだけ多くの喜びを味わえます。

習慣として繰り返すうちに、瞑想状態でなくとも好きな香りを感知して、 自分を最高の気分に導くことあらゆる感覚を全て鼻先に向ける ができるようになります。

1回30分を目安に練習を重ねましょう。

やればやるほど、目的とする心静かなリラックスした状態に至る時間は短くなっていきます。嗅覚を活用した瞑想をぜひ試してみてください。